軽井沢の別荘文化とともに、百年の時を刻む伝統工芸 軽井沢彫。
本特集では時代と共に発展を遂げて来た独自の世界とこれからについて、紹介する。




軽井沢彫のこれまで


軽井沢は明治時代の中頃から、外国人宣教師や外交官などにより、避暑地として別荘が建てられてきた。その内装用に作られた、草花の華麗な彫刻が彩る洋式家具を「軽井沢彫」と呼んでいる。別荘が建ち始めた頃、宣教師たちの母国ではビクトリア後期の彫刻家具が流行していた。このため家具の注文の際に彫刻装飾が求められた。それが軽井沢彫家具のデザインとして定着していくことになる。軽井沢での洋式家具の需要増加を見越し、日光彫の修行を積んだ清水兼吉と川崎巳次郎が、日光彫職人を連れて軽井沢に彫刻付様式家具製造販売店を1908(M41)年に開業。当時まだ日本人にとって洋家具は馴染みの少ないものだったが、大正期に入り軽井沢が避暑地として全国的に知られるようになると、旧華族、政財界関係者、大学教授、文化人にも別荘生活が流行し、同時に軽井沢彫も浸透していくこととなる。


初期の彫刻のモチーフは、松・竹・梅・牡丹・菖蒲・菊・向日葵など、日光彫の影響が色濃かったが、異国情緒を求める外国人の心情にこたえ、満開の桜の樹を衣装戸棚や整理ダンスの全面に彫り上げるようになった。これが軽井沢彫家具の華やかさと特色として広く認知されていく。そしてこういった家具は、軽井沢文化を象徴する歴史的ホテルや別荘などの特徴として、建築と共に今も大切に保管されている。




軽井沢彫の今


2012年10月6日から14日まで、旧三笠ホテルで開催されている「軽井沢彫家具展」では、明治後期から現代に至るまでに作られた軽井沢彫家具が並ぶ。一連を通して見ると、軽井沢彫ならではのデザインと雰囲気が、今も忠実に継承されていることが分かる。


現在の軽井沢の製造販売店では、もともと洋家具として発展してきた軽井沢彫家具の歴史を生かしつつ、単に古来のデザインを模すのではなくて、「現代のデザイン家具」として今の生活の中に溶け込む作品を作る努力が続けられている。そうして作り上げられた、モダンでシンプルな現代作品の数々は、男女問わず幅広い年齢層に好評を得ている。また、武蔵野美術大学教授を招き、新しいデザインを構築するなどの取り組みも行われている。




これからの軽井沢彫


軽井沢彫としては珍しい薔薇のモチーフの拡張テーブル。これは近年、考案されたもので、今後さらに研究を重ねて行きたい分野だそうだ。新しいデザインでありながら、軽井沢彫の雰囲気は色濃く引き継がれている。


日本に生まれ、生活していると、身近すぎて気付く事の出来ない日本らしさ。それを外国人旅行者の言葉から、思いがけず気付かされることがある。それと同じで、私たち日本人が軽井沢彫を見る時、洋家具でありながら、そこに日本の情緒を見出す事が出来る。それは昔、日本へ渡って来た外国人宣教師や外交官達が強く印象に持った日本のイメージを、そのまま模したのが軽井沢彫だったからに他ならない。彼らの残した思いが、現代日本の私たちにも、古き良き日本を思い出させてくれるのだ。日本の情緒を愛する、という心と共に、生活の一部として長く愛用される。それがこれまでの軽井沢彫の歩みであり、これからも目指して行く姿なのだ。




軽井沢彫家具(書籍)

軽井沢彫家具(書籍)が発行されました。
平安堂軽井沢店の他、一彫堂オンラインショップでもご購入いただけます。


単行本(ソフトカバー): 180ページ
企画 : 軽井沢彫家具組合
協力 : 軽井沢商工会
発売日 : 2012年3月31日発行(初版)

軽井沢彫 製造販売店

(有)一彫堂
エリア:旧軽井沢 TEL:42-2557
http://www.icchodou.com/
旧軽井沢銀座通りに面し、初代から万平ホテルや宣教師の別荘家具を製作してきた軽井沢彫の老舗です。伝統の技を継承し、オーダー家具から小物まで、店舗奥の工房にて6人の職人が製作しております。軽井沢へお越しの際は是非お立ち寄りください。


軽井沢彫 シバザキ
エリア:旧軽井沢 TEL:42-2468
http://www.sibazaki.com/
旧軽井沢メインストリートに面するシバザキ。創業昭和22年、軽井沢彫を手がけてすでに60余年です。地域の皆様、別荘のオーナーの方々、そして毎年多くの観光のお客様に育んでいただいております。美智子皇后陛下がご結婚の際の調度品にとお求めになられたのも、シバザキの手箱でした。皇太子殿下(当時)と出会われた思い出の地の品として、今もご愛用戴いておられると存じます。店内には軽井沢彫の手箱、手鏡、宝石箱からテーブルウェアなどの工芸品類を豊富に取り揃えております。家具はほとんどが一品製作のため、多くを展示しておりませんが、職人がお客様のご注文、ご要望を十二分に受けとめて、大きさ、飾りなど、ご希望に沿った家具をお作りいたします。ぜひ一度ご相談ください。


大坂屋家具店
エリア:旧軽井沢 TEL:42-2550
http://www.osakaya-f.co.jp
明治・大正期の製造と伝えられる軽井沢彫家具が、別荘で何代にも渡って大切に使い続けられている例は少なくありません。時代の流れと共に、別荘用の家具としてだけではなく、日常の生活でもお使いいただけるよう、デザイン・仕様・彫刻装飾・色彩などに工夫を重ねてまいりました。現在4代目土屋強平の「伝統を守りながら、新しい技を生み出す努力を決して怠らない」という考えのもと、2009年に迎えた創業百年を新しい第一歩として、次の100年を歩み始めました。

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