2012美しい村特集vol.2 マザーグースと童話展 〜ひらいたかこの世界〜


豊かな色彩の中、生き生きと躍動するキャラクターたち———。見る者を物語の深層へ引き込む、ひらいたかこ氏の幻想的な作品群を、貴重な原画で見る事が出来る展示会が、軽井沢 絵本の森美術館で開催されている。本特集では、その詳細を紹介する。



50点を越える貴重な原画たち


絵本の森美術館 第2展示館
絵本の森美術館 マザーグースと童話展 B展示室

新緑眩しい絵本の森の一角に、小さな古城を思わせる展示館がある。現在その館内で、ひらいたかこ氏の原画を集めた「マザーグースと童話展 〜ひらいたかこの世界〜」が開催されている。


ひらいたかこ氏は同美術館が2008年に開催した「マザーグースの絵本展」にて取り上げられた、画家たちのうちの1人だった。その際に来館者から、ひらい氏の作品をもっと見てみたいという声が寄せられ、それに応える形で、今回の個展は企画された。


ひらいたかこ氏の原画は光に弱いカラーインクで描かれている。そのため屋外や、明るい部屋での展示には不向きだ。しかし今回は太陽光を遮断出来る展示室の特性を生かし、照明を最小限に抑える事で、長期の展示を可能にした。


作品選びには画家本人も加わった。展示館全体を使い、小さな作品から、普段なかなか見ることのできない大きな作品まで幅広く選出し、結果として50点を越す大規模な個展となった。ひらい氏の美しい原画の数々を、一挙に見る事のできる大変貴重な展示会と言える。



幻想的なイラストが織りなす3つの世界


今回の展示は、大きく3つに分かれている。「A展示室 マザーグースによせて」では、ひらいたかこ氏の代表的な作品であるマザーグースのシリーズが、ひらい氏訳の唄と共に並ぶ。原詩のとらえ方の正確さ、想像の翼が自在に飛び交う世界、マザーグースをこよなく愛する画家だからこそ描き出せる幻想性に注目したい。


ひらいたかこ画「ディア マザーグース」※部分拡大 ©Takako Hirai  ひらいたかこ画「アリスinカレンダーランド」©Takako Hirai


「B展示室 物語を紡ぐイラストレーション」には、「アンデルセン童話」「グリム童話」「不思議の国のアリス」をテーマにした作品が並ぶ。子供の頃に誰もが憧れた夢の世界が、彩り豊かに目を楽しませてくれる。特に「不思議の国のアリス」は水彩を用いて描かれているので、カラーインクの他作品とのタッチの違いも見比べたいところ。


「C展示室 もうひとつの幻想世界」では、他の2つの展示室とは違う、すこし怖くてミステリアスな作品が集められている。ミステリー小説のファンであるひらいたかこ氏が東京創元社のアガサ・クリスティ短編全集などのミステリーの表紙や挿絵に寄せた作品や、内容がすこし怖い童話など、明るいばかりではないファンタジーの深淵に向き合うことの出来る空間だ。



画家の目線を記録する スケッチの数々


当展示会のもう一つの見どころ、それがひらいたかこ氏のスケッチだ。作品のためのラフ画や、旅先の街角を描写した風景画、レシートに走り書きされた食事のイラスト。その精巧さは勿論のことだが、日常的なスケッチの中に、ひらい氏が日頃どんな目線で世界を捉えているのか、その一片を知る事ができる。


そしてスケッチの合間に、時折現れる小さな人形たち。なんと、それらもまたひらい氏の作品と聞いて驚く。イラストから抜け出してきたままの存在感。数々ある中に、ひらい氏ご本人を模した人形も紛れている。展示室内で是非、探してみて欲しい。


ひらいたかこスケッチ  ひらいたかこ作 人形「witch」


1枚の絵に込められた 壮大なストーリー


ひらいたかこ氏の作品の前では、誰もが時間を忘れて立ち尽くす。1枚の絵の中に、壮大なストーリーが込められているからだ。
幻想的な空間の中、様々な表情を浮かべ、生き生きと動き回るキャラクターの数々。わたしたちはいつの間にかその1人に成り代わり、ファンタジーの深層へと引き込まれて行く。
そんな感覚を是非、心のこもった美しい原画の前で、体験して欲しい。本展は6月11日(月)まで開催


<次回企画展>

牧野鈴子画「赤ずきん」©1988 Suzuko Makino


「メルヘンを彩る幻想世界 〜牧野鈴子のまなざし〜」
会期:2012年6月15日(金)〜10月1日(月)
優美で幻想的な画風が人気の高い牧野鈴子氏の、貴重な原画約60点を展示。
6月23日(土)には、牧野氏をゲストに招き、欧米児童文学研究者 吉田新一氏との対談形式で創作秘話に迫る「えほんサロン」を開催。詳しくはこちら



<絵本の森美術館 その他の展示・施設>

緑蔭茶論 センダック・フェア緑蔭茶論 センダック・フェア
緑蔭茶論 モーリス・センダック フェア


「かいじゅうたちのいるところ」をはじめ、80冊を越える作品を発表し、現代絵本界を代表する作家であったモーリス・センダック(2012年5月8日逝去)。その絵本やキャラクターグッズを集めたフェアを緑蔭茶論で開催中。


木葉井悦子のアトリエ 〜昔話と物語〜
木葉井悦子のアトリエ 〜昔話と物語〜


第1展示館 2012年4月25日(水)〜6月11日(月)
多くの絵本画家に影響を与えてきた木葉井悦子氏の原画を展示。既に絶版となっている貴重な絵本も見る事ができる。また木葉井氏が大きく影響を受けたアフリカ文化の一部も紹介している。


ポップアップ絵本コーナーポップアップ絵本コーナー
ポップアップ絵本コーナー(第1展示館)


子供たちが大好きなポップアップ絵本を、触って楽しめるコーナー。


絵本図書館
絵本図書館


絵本の森を見下ろせる場所に位置する図書館では、古くから親しまれてきた世界の絵本や、珍しい大型絵本などを、自由に手に取って読む事ができる。


絵本のお店
絵本のお店


洋書絵本を中心に、翻訳絵本や和書絵本、人気キャラクターグッズやポストカードなどを豊富に取り揃えたミュージアムショップ。企画展示中の画家や作家のグッズも購入出来る。


ピクチャレスクガーデンピクチャレスクガーデン
ピクチャレスク・ガーデン


「ピクチャレスク・ガーデン」とは、「絵のように美しい庭」という意味。絵本の森美術館内に、英国人ガーデン・デザイナー ポール・スミザー氏が手掛けるナチュラルガーデン。
2012年7月21日(土)スミザー氏によるガーデン講座開催。詳細はこちら


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