2012美しい村特集vol.4


「楽園」とはどんなものか、思い描いたことがあるだろうか————。
物事の本質を捉え、視覚的に表現する現代美術。その多彩な表現は、美術家たちの創り出す世界、すなわち「楽園」とも言える。さまざまな「楽園」を、楽しみながら発見できる展覧会が、軽井沢のセゾン現代美術館で開催されている。本特集ではその概要を紹介する。



セゾン現代美術館庭園現代に生きる美術館


財団法人セゾン現代美術館(旧高輪美術館)は、1962年東京高輪に開館し、日本の伝統美術の紹介に努めてきた。その後、現代美術に対象を定め、同時代の実験的創造の場として1981年、新たな構想のもと軽井沢へ移転した。そして現代美術の愛好者たちから高い評価を受けるまでに成長。開館10周年を迎えた1991年には、美術館の設立目的や活動方針の根拠を占める「現代美術」を館名に表示し、セゾン現代美術館と改称した。


正門を入ると目の前に広がる緑の光景。起伏のあるなだらかな斜面が印象的な庭園は、彫刻家 若林奮氏(1936年 – 2003年)による基本プランのもと、造成された。庭園入口脇に設置された彫刻と門にはじまり、地形の再構成、台地、遊歩道、二つの鉄の橋、傾斜地の鉄板、植栽等、若林氏のプランは多岐かつ細部に及び、この庭園全体を若林作品と考えるべきものだ。


セゾン現代美術館外観そしてその奥にある美術館は「緑の中の美術館」というコンセプトで知られるように、軽井沢の自然に溶け込む数寄屋造りのような低層の佇まい。設計は、日本を代表する建築家 菊竹清訓氏(1928年- 2011年)。菊竹氏は2000年にユーゴスラヴィア・ビエンナーレにて「今世紀を創った世界建築家100人」に選ばれている。





現代美術の潮流をなぞるコレクション


セゾン現代美術館では、20世紀初頭から現在に至る世界の現代美術の潮流を形作ってきた芸術家たち(カンディンスキー、マン・レイ、ジャスパー・ジョーンズ他)、並びに戦後日本を代表する現代美術作家たち(荒川修作、堂本尚郎、横尾忠則、中村一美他)の作品を系統的に収集している。その中から今回は「現代美術の楽園」というテーマに沿って約160点が選出された。



現代美術の楽園「楽園」の入口


館内は10の「楽園」に分かれているが、それぞれの説明は殆どない。各入口に横尾忠則氏の版画「聖シャンバラ」が置かれている。


説明ではなく、作品を入口に配置した構成には、「観覧者に自由に楽園を見出してもらいたい」という当展覧会ならではの意図が感じられる。


シャンバラとは、サンスクリット語を語源とする理想の地底王国の首都、あるいは入口を意味する言葉。横尾氏の「聖シャンバラ」シリーズは1974年の作品だが、時を経ても色あせない魅力で芳香を放ち、見る者を別世界へ誘う。



展覧会の見どころ


主な出品作品は、パウル・クレー、マーク・ロスコ、ルーチョ・フォンタナの作品他。1階の展示室は、マン・レイの写真作品「ファースト・ステップス」や、アンディ・ウォーホール「ポートフォリオ<Ads>」「ポートフォリオ<毛沢東>」を、一連の流れで鑑賞出来る絶好の機会となっている。現代美術作品を系統的に収集してきた美術館ならではの見どころだ。



現代美術の楽園作品が発信する力強いメッセージ


展示室を進むと、身長を遥かに越える大型の作品が並ぶ。菊竹氏設計の立体的な空間でそれらと対峙すると、奥行きのある作品の世界に忽ち引き込まれていく。


古代から人々は、広い意味での「楽園」を希求してきた。 その希求する力によって、よりよい生活を現実化してきたといえる。絵画、彫刻、音楽、文学・・・それら想像力による産物は、「楽園」のモデルを人びとに与えてきた。


展示室に並ぶ作品群からは、過去の芸術家たちの「楽園」を希求する情熱の強さを感じる。彼らは時代の抑圧の中にあっても、「楽園」を追い求めることを諦めなかった。


混迷する現代、わたしたちが彼らの作品を目の前にする時、そのひたむきさに胸を打たれ、そして彼らが「楽園」を追い求めてきた末に、今があることを改めて認識する。


現代美術の楽園現代美術の楽園



わたしたちにとっての「楽園」


わたしたちは、「楽園」について考えたことがあっただろうか。見出し難いがゆえに、もはや願望することさえ失われてはいないだろうか。


「わたしたちの未来=楽園」。この展覧会の中に立つと、それを思い描く事を止めてはいけない、という先人たちの声が、聞こえてくるような気がする。


是非、多くの方に見て、感じて頂きたい。本展は7月1日(日)まで開催



<軽井沢 セゾン現代美術館 2012年度 展覧会スケジュール>


1. 現代美術の楽園
4月14日(土)〜7月1日(日)


2. 夏期コレクション特別展
7月6日(金)〜9月30日(日)


3. ART TODAY 2012
10月6日(土)〜11月23日(金・祝)


※木曜休館/但し8月無休/その他展示替えのための休館があります。



<軽井沢 セゾン現代美術館 その他の施設>


カフェ クロワッサン
カフェ「ル・クロワッサン」


美術作品が並ぶ落ち着いた雰囲気のカフェが、美術館入口横にある。メニューはスパゲッティ、丁寧に淹れたコーヒーや紅茶、自家製のバナナケーキなど。天気の良い日は、テラスのテーブル席で庭園を眺めながら、ランチやティータイムを楽しむことができる。


ミュージアムショップ
ミュージアムショップ


展覧会カタログやコレクション作品のポストカード、海外のミュージアムグッズを販売。


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